Microsoftといえば、Windows OSやMicrosoft Officeに代表されるように、「ソフトウェアを開発・販売する会社」というイメージがありました。
過去形なのは、ここ10年ほどの間に、クラウドサービスやハードウェアも手がけるようになってきたから。
クラウドサービスならまだしも、なぜMicrosoftがハードウェアを作り続けているのでしょうか。
「Microsoft Tech Summit 2018」で行われた日本マイクロソフト モダンワークプレイス統括本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナルの松野健二氏によるセミナー「Microsoft Surface ~ 何故、マイクロソフトがデバイスを作るのか?」から答えを得ていきましょう。
「実は、MicrosoftではiPad登場前からタッチデバイスを意識したOSを出していたんです」と松野氏。2009年に登場したWindows 7です。
これは、タッチ操作のユーザーインターフェース「Windowsタッチ」を標準搭載したOSでしたが、「一部の特別な用途に限定されていた」とのこと。
やがて、タブレットデバイスでも利用できるOSのWindows 8をリリースし、各社から同OSを搭載したタブレットデバイスが発売されたが「画面の半分を(ソフト)キーボードが占有する」「生産性が下がる」という理由で、ビジネス利用の主流にはならなかったといいます。
つまり、OSやソフトウェアだけ提供していても、広まらない、という現実にぶつかってしまったのです。
そして、これこそがMicrosoftがデバイスを作る1番目の理由なのです。「なければ作ればいい。そしてマーケットも」。
マーケットづくりには認知が、認知のためにはインパクトが必要です。2012年にSurface RTを発売した際、タブレット with キーボードのテレビCMを作成。場所を選ばず仕事する若いノマドワーカーを中心に、さまざまな年齢層の人たち登場して繰り広げるダンスパフォーマンスは、Surfaceの特徴を深く印象づけるものとなりました。
「その後、さまざまなSurfaceシリーズが作られ、Surface Proでいえば、もう6代目。2in1というカテゴリーも定着し、お客さまにも提案できるようになり、マーケットづくりは成功したのではないか、と考えています」
Surface RTにはじまり、Surface Pro、Surface Book、Surface Laptop、2018年にはコンパクトなSurface Goがリリースされましたが、「Surfaceの2in1シリーズは、タブレット、キーボード、ペンの3点セットというコンセプトは一貫している」と松野氏。「良いデザインは多くの人に支持されて、その使いやすさが評価される」というSurfaceシリーズの生みの親であるパノス・パネイ氏の言葉を引き合いに出します。
そして、後半の「中身は全く違う。使い慣れた良さを変えずに、中身は常に進化している」という言葉を引用しつつ、次のような点でSurfaceが進化してきたと説明します。
「プロセッサが進化することで、処理能力が向上し、ビデオ会議も可能に。深度情報を検出できる赤外線カメラを使ったWindows Helloは、作業スタートまでの時間の短縮とセキュリティの向上を、LTEネットワークに単体でつなげられることは、利便性を大いに増しました」と松野氏。
ビデオ会議などコミュニケーションの邪魔になってきたのが、本体を冷却するためのファンの音。ファンレス化しても熱を放出できるよう、マグネシウムボディを採用するなど、「熱との戦いがそこにはあった」と言います。
その甲斐あって、新しいSurface Proではボディ全体で放熱することに成功。以前のものに比べ、2倍の放熱効率を誇るようになりました。
初代では平らだったキートップが指の腹に合わせたカッティングを施した形状になり、キー配置は間違えて隣のキーを押さないようなアイソレーションタイプに変更。押し込みの深さや感触なども少しずつ調整していったと言います。
「Microsoftでは、数十年に渡りキーボードを作り続けてきましたから、その技術をこの薄いタイプカバーに集結させることが可能だったのです」(松野氏)
また、Surface ペンも「筆圧検知、傾き検出、追随性で進化した」と松野氏。初代では256段階だった筆圧検知が、現在では4096段階に、傾き検出を搭載することで、より"Pencil"に近い書き味を出せるようになりました。
ここで松野氏は、Surface ペンの使いかたデモを披露します。Windows標準のinkスケッチパッドやインク文字変換、Office 365 ProPlusのWordでの利用のほか、マップアプリケーションでも実はSurface ペンが役に立ちます。
例えば、線を引くだけで距離を測ったり......
経路を表示する、ということもできます。
それが「進化するWindows 10やOffice 365の機能を、フル活用できるかっこいいデバイスを作りたい」というものです。
それは、Azureクラウド上から端末の設定に必要なポリシーやアプリケーションを配布し、端末内で展開するから。IT管理者は、本体に触れることなく、管理画面から操作するだけでエンドユーザーが使えるようにできるのです。
もちろん、運用開始後も、ネットワークに接続していれば、ほかのWindows OS搭載デバイス同様、自動的にファームウェアやドライバーのアップデートも行われ、脆弱性が修正されます。
そのため、「これからもMicrosoftは、デバイスづくりを続けていきます」と松野氏は宣言しました。
MicrosoftがSurfaceシリーズを作りはじめてからまだ6年。本体や周辺機器、またSurfaceをより便利に使えるようにするクラウド環境は進化してきましたが、「変わらないものもある」と松野氏は言います。それは「品質と信頼性の維持と向上に努めてきたという事実」。
ワシントン州にある「Surface Reliability Lab(リライアビリティラボ)」では、品質や信頼性向上のため、落下テストや振動テスト、耐久テストなどSurfaceにとっては拷問とも思えるようなテストを行い、問題が検出された場合は、次の開発へフィードバックされています。
最後に、Microsoftがデバイスを作る理由を松野氏はまとめます。
そのため、Surface Proですでに提供しているLTEモデルを、携帯しやすいSurface Goでも年内に提供予定。「Free Wi-Fiスポットの少ない日本では、Surface Proユーザーの40%がLTEモデルを購入している」とのことですから、Surface GoでもLTEモデルの需要は高いと本社が判断したそうです。
生産性を向上させ、少しでも多くの余暇を作るためのデバイスを作り続けるMicrosoftから、今後も目が離せないと感じさせられるセッションでした。
過去形なのは、ここ10年ほどの間に、クラウドサービスやハードウェアも手がけるようになってきたから。
クラウドサービスならまだしも、なぜMicrosoftがハードウェアを作り続けているのでしょうか。
「Microsoft Tech Summit 2018」で行われた日本マイクロソフト モダンワークプレイス統括本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナルの松野健二氏によるセミナー「Microsoft Surface ~ 何故、マイクロソフトがデバイスを作るのか?」から答えを得ていきましょう。
便利なタッチデバイスを意識したOSを早い段階から販売していたMicrosoft
さかのぼること10年以上。2007年にiPhoneが登場し、翌年にはHTCから初のAndroid搭載スマートフォンが発売されました。2010年になるとiPadが発表され、人々は「タッチデバイスって便利だ」と感じるように。「実は、MicrosoftではiPad登場前からタッチデバイスを意識したOSを出していたんです」と松野氏。2009年に登場したWindows 7です。
これは、タッチ操作のユーザーインターフェース「Windowsタッチ」を標準搭載したOSでしたが、「一部の特別な用途に限定されていた」とのこと。
やがて、タブレットデバイスでも利用できるOSのWindows 8をリリースし、各社から同OSを搭載したタブレットデバイスが発売されたが「画面の半分を(ソフト)キーボードが占有する」「生産性が下がる」という理由で、ビジネス利用の主流にはならなかったといいます。
つまり、OSやソフトウェアだけ提供していても、広まらない、という現実にぶつかってしまったのです。
最適なデバイスがないなら作ればいい
「キーボードがないと仕事にならないのであれば、タッチできるタブレットにキーボードをつければいいんじゃないか」――そうして生まれたのが2in1のSurfaceシリーズでした。そして、これこそがMicrosoftがデバイスを作る1番目の理由なのです。「なければ作ればいい。そしてマーケットも」。
マーケットづくりには認知が、認知のためにはインパクトが必要です。2012年にSurface RTを発売した際、タブレット with キーボードのテレビCMを作成。場所を選ばず仕事する若いノマドワーカーを中心に、さまざまな年齢層の人たち登場して繰り広げるダンスパフォーマンスは、Surfaceの特徴を深く印象づけるものとなりました。
「その後、さまざまなSurfaceシリーズが作られ、Surface Proでいえば、もう6代目。2in1というカテゴリーも定着し、お客さまにも提案できるようになり、マーケットづくりは成功したのではないか、と考えています」
Surface RTにはじまり、Surface Pro、Surface Book、Surface Laptop、2018年にはコンパクトなSurface Goがリリースされましたが、「Surfaceの2in1シリーズは、タブレット、キーボード、ペンの3点セットというコンセプトは一貫している」と松野氏。「良いデザインは多くの人に支持されて、その使いやすさが評価される」というSurfaceシリーズの生みの親であるパノス・パネイ氏の言葉を引き合いに出します。
そして、後半の「中身は全く違う。使い慣れた良さを変えずに、中身は常に進化している」という言葉を引用しつつ、次のような点でSurfaceが進化してきたと説明します。
- Surface本体の進化
- 周辺機器の進化
- クラウドとの連携
Surface本体の進化
本体が進化することで、「どこででも仕事ができる」が現実的なものになったと松野氏は言います。「プロセッサが進化することで、処理能力が向上し、ビデオ会議も可能に。深度情報を検出できる赤外線カメラを使ったWindows Helloは、作業スタートまでの時間の短縮とセキュリティの向上を、LTEネットワークに単体でつなげられることは、利便性を大いに増しました」と松野氏。
ビデオ会議などコミュニケーションの邪魔になってきたのが、本体を冷却するためのファンの音。ファンレス化しても熱を放出できるよう、マグネシウムボディを採用するなど、「熱との戦いがそこにはあった」と言います。
その甲斐あって、新しいSurface Proではボディ全体で放熱することに成功。以前のものに比べ、2倍の放熱効率を誇るようになりました。
周辺機器の進化
Surfaceの周辺機器といえば、タイプカバーとペンですが、こちらもひっそりと使い勝手が良くなっているようです。初代では平らだったキートップが指の腹に合わせたカッティングを施した形状になり、キー配置は間違えて隣のキーを押さないようなアイソレーションタイプに変更。押し込みの深さや感触なども少しずつ調整していったと言います。
「Microsoftでは、数十年に渡りキーボードを作り続けてきましたから、その技術をこの薄いタイプカバーに集結させることが可能だったのです」(松野氏)
また、Surface ペンも「筆圧検知、傾き検出、追随性で進化した」と松野氏。初代では256段階だった筆圧検知が、現在では4096段階に、傾き検出を搭載することで、より"Pencil"に近い書き味を出せるようになりました。
ここで松野氏は、Surface ペンの使いかたデモを披露します。Windows標準のinkスケッチパッドやインク文字変換、Office 365 ProPlusのWordでの利用のほか、マップアプリケーションでも実はSurface ペンが役に立ちます。
例えば、線を引くだけで距離を測ったり......
経路を表示する、ということもできます。
Microsoftが提供するサービスを"フル活用"できるかっこいいデバイスを作りたかった
3番目の進化ポイント「クラウドとの連携」に関連し、Microsoftがデバイスを作り続ける二番目の理由を松野氏は挙げました。それが「進化するWindows 10やOffice 365の機能を、フル活用できるかっこいいデバイスを作りたい」というものです。
クラウドとの連携
Surfaceシリーズは、AutoPilotに完全対応しています。これまでは、企業でデバイスを導入する際、IT管理者はキッティングを1台1台していく必要がありました。でも、Surfaceであれば、ユーザーが箱から出せばすぐに使い始められます。それは、Azureクラウド上から端末の設定に必要なポリシーやアプリケーションを配布し、端末内で展開するから。IT管理者は、本体に触れることなく、管理画面から操作するだけでエンドユーザーが使えるようにできるのです。
もちろん、運用開始後も、ネットワークに接続していれば、ほかのWindows OS搭載デバイス同様、自動的にファームウェアやドライバーのアップデートも行われ、脆弱性が修正されます。
MicrosoftのSurfaceはインテリジェントエッジの重要なピース
最後の理由は、Microsoftのクラウドサービスと組み合わせて最高の体験を得るための重要なピースとなるら、というもの。そのため、「これからもMicrosoftは、デバイスづくりを続けていきます」と松野氏は宣言しました。
MicrosoftがSurfaceシリーズを作りはじめてからまだ6年。本体や周辺機器、またSurfaceをより便利に使えるようにするクラウド環境は進化してきましたが、「変わらないものもある」と松野氏は言います。それは「品質と信頼性の維持と向上に努めてきたという事実」。
ワシントン州にある「Surface Reliability Lab(リライアビリティラボ)」では、品質や信頼性向上のため、落下テストや振動テスト、耐久テストなどSurfaceにとっては拷問とも思えるようなテストを行い、問題が検出された場合は、次の開発へフィードバックされています。
最後に、Microsoftがデバイスを作る理由を松野氏はまとめます。
- それまでになかったものや新たなWindowsマーケットを創るため
- Windows 10やOffice365の機能をフル活用できるかっこいいデバイスを生み出すため
- Microsoftが提供するクラウドサービスから最高の体験を得られる重要なピースを埋めるため
そのため、Surface Proですでに提供しているLTEモデルを、携帯しやすいSurface Goでも年内に提供予定。「Free Wi-Fiスポットの少ない日本では、Surface Proユーザーの40%がLTEモデルを購入している」とのことですから、Surface GoでもLTEモデルの需要は高いと本社が判断したそうです。
生産性を向上させ、少しでも多くの余暇を作るためのデバイスを作り続けるMicrosoftから、今後も目が離せないと感じさせられるセッションでした。
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