2018年10月2日(米国時間)に開催された米MicrosoftのSurface製品発表イベントでは、事前の予想通り既存ラインのアップデート版となる「Surface Pro 6」「Surface Laptop 2」「Surface Studio 2」が発表された。サプライズとしてはノイズキャンセリング機構が付いたCortana対応デバイスの「Surface Headphones」が発表されたものの、全体的にマイナーチェンジ感が拭えず、“新型ハードウェア”的なものを期待していた人にはやや残念な内容だったかもしれない。
実際、Microsoft側でもこのタイミングでSurface製品発表会の開催は悩みどころだったようで、開催にあたって例年なら実施されるイベントの模様をストリーミング配信せず、対外的なアピールはプレスリリースを出すにとどまっている。
一方、日本国内では1週間後の10月10日に製品開発トップのパノス・パネイ(Panos Panay)氏が来日し、今回のケースでは珍しい製品お披露目イベントが実施されているわけで、それだけ日本がSurface販売における重点市場として考えられていることが改めて確認できた訳だ。
さて、こうしたMicrosoftとSurfaceの裏事情と今後について記した本が11月末に出版されて話題になっている。
タイトルは「Beneath A Surface(“表面”下)」で、著者はThurrott.comなどのMicrosoft最新事情レポートで著名なブラッド・サムス(Brad Sams)氏だ。本の概要についてはPC USERで佐藤由紀子氏も紹介しているが、Kindle版も提供されているので日本の読者もAmazon.comやAmazon.co.jpで簡単に入手可能だ。今回はこの内容を振り返りつつ、2019年のMicrosoftハードウェア事情について少しだけまとめてみたい。
2019年のSurfaceはどうなる?
まずはSurface関連では、USB Type-Cの搭載で新デザインを採用したSurface Proも興味深いが、今回はSurface StudioとSurface Laptopに注目したい。前述した佐藤氏のレポートにもあるように、MicrosoftはSurface Hub 2の延長線上にあるようなモジュラーデザインで、PC部分のみをアップグレードできるSurface Studioを2020年にもリリースする計画があるという。
興味深いのは、このアイデアがSurface Studioが発表される前にMicrosoftの申請特許として話題となった「スタッカブルPC」のそれに近く、機能拡張モジュールでPCを進化させる仕組みを採用するのではないかという点だ。
もともとAiO(All-in-One)カテゴリーの製品として発表されたSurface Studioだが、PCとディスプレイ機能の分離はそのコンセプトを越えるもので、「新しいPCの形を提案する」というSurfaceの位置付けに合致している。
次にSurface Laptopだが、2019年第4四半期に投入が見込まれる新製品ではAMDの「Picasso」アーキテクチャを採用したものが検討されているという。Picassoは現行製品ラインの「Raven Ridge」の後継にあたるAPUで、2019年の製品投入が見込まれている。
競争という面ではIntelプロセッサ固定よりも、AMDというライバルがいたほうが価格や性能面でPCメーカーやユーザーが得られるメリットも大きいため、Microsoftとして何らかの判断が働いた可能性がある。
サムス氏のレポートでは触れられておらず、“こだわり”の強いパネイ氏がどこまで興味を示しているのか不明だが、MicrosoftではPC製品ラインの拡張にQualcommのSnapdragonを活用する意向を示しており、いずれこれがSurface Go、Surface Pro、Surface Laptopといった製品群に波及してくる可能性がある。「Always Connected PC」のコンセプトをどのようにSurface製品で展開してくるのか、個人的な2019年の注目ポイントと考えている。
あの「Andromeda」は?
ここ1~2年ほど話題となっている「Andromeda」については相変わらず微妙な位置付けで、「2019年に出る可能性がある」という程度に留まっている。これについてはZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏も自身の情報源と合わせながら、「当初想定されていたものよりも大型になる」と述べている。
Andromedaについて何度もレポートしているザック・ボーデン氏によれば、当初想定されていたAndromedaは折りたたみ状態のサイズが5~6型のスマートフォンと同程度のサイズということで、これを開いて展開すると6.5~8型程度のディスプレイサイズになる。
額面通りに受け取るならば、全体に1~2型程度サイズアップして展開時に10型程度を想定したものとなり、縦横比は異なるが、Surface Goに近い(Andromedaはより正方形に近くなる)。問題は、電子書籍以外にこれがフィットする市場が即座に思い浮かばない点で、おそらくMicrosoftが製品を市場投入するとしてもアプリケーションが重要となるだろう。
MicrosoftはどこまでSurfaceに本気なのか
さて、Surface製品でここ2~3年特につきまとっているのが「MicrosoftがどこまでSurfaceに本気なのか」という話題だ。昨今は株式市場でMicrosoftの時価総額がAppleのそれを再び上回って話題となったが、これもクラウドとAI重視を掲げるCEOのサティア・ナデラ氏の手腕やビジョンが評価されてのものだ。
それだけに、なかなか利益を生み出しにくいハードウェアビジネスのSurfaceに対する評価は同社全体のそれに比べて低く、Windows OS開発の位置付けが格下げされる背景の中、「MicrosoftがいつSurfaceから撤退するのか?」といった声にもつながる結果になっている。
だが英Independent紙のインタビューでパネイ氏は、インタビュアーのAdrian Weckler氏に対して「今後もSurfaceビジネスは続けていくし、仮に5年前に同じ質問を受けていたとしても確信を持って同じ回答をしていただろう」と述べている。ナデラ氏からの反応も「ソフトウェアを最大限に生かせるハードウェアの可能性を模索し、将来的なMicrosoftの成長につなげるビジネス」としてSurfaceが位置付けられており、CEOが示すビジョンから外れていない点を強調している。その意味で、MicrosoftがSurfaceでどこまでやれるのか、今後も楽しみに待ちたいと思う。
新型HoloLensと“新ハードウェア”が登場
Microsoftの2019年のハードウェア製品として忘れてはならないのは「HoloLens 2」だ。以前のレポートでサムス氏が「2019年第2四半期が現在のターゲット」と報じていたが、現在量産ベースでの課題が解決すれば2019年春に製品が発表され、夏ごろには出荷される見込みとなっている。
特徴としては、AIコプロセッサ「HPU 2.0」の搭載によって画像やモーション認識機能が強化され、ディスプレイの視野角問題がある程度改善される他、ハードウェアが小型化されることが見込まれている。
これに加え、新たにNeowinが12月10日(米国時間)に複数の情報源の話として報じているのは、次世代HoloLensに「Snapdragon 850」が採用される可能性が高いといううわさだ。
Snapdragon 850は、Qualcommとしては初の「PCをターゲットとしたSoC」であり、現行版のHoloLensに搭載されているIntelのAtomプロセッサを置き換えるものとなる。さらに850の特徴として「Snapdragon X20 LTE modem」を搭載しており、これによりLTE接続を可能とする。
現状のHoloLensはスタンドアロンでの運用も可能だが、インターネット接続にWi-Fi環境が必須となっている。そのため、アプリケーション次第ではあるものの、屋内中心で運用環境の制限を受ける傾向がある。もしLTEによる携帯ネットワーク接続が可能になれば、従来の枠を飛び越えたアプリケーションの登場や活用場面が増えることになるだろう。基本性能の向上もさることながら、おそらくはHoloLens 2での一番大きな変化はここかもしれない。
最後の話題として挙げる“ハードウェア”がWebカメラだ。4K対応かつWindows Hello対応のMicrosoftブランドのWebカメラが2019年に市場投入される見込みだという。本件を報じているのはThurrott.comのポール・サーロット(Paul Thurrott)氏で、Surface以外のPCに加え、Xbox Oneでの利用が可能だという。
インタフェースとしてUSB Type-Cに対応し、2019年後半にも登場するSurface Hub 2向けの提供も行われるようだ。Windows Helloの顔認証を手軽に利用する仕組みがまだ限られる中、ビデオ会議への応用も可能な4K対応Webカメラは広く需要があると思われ、主にエンタープライズ向けを中心に訴求していくことになると予想する。
MSPoweruserも「Most popular Xbox Kinect feature coming back next year」のタイトルで同じように報じていたが、2017年に“レガシー”としてひっそり消えていったKinectの技術が翌々年の2019年に別の形で復活するのは非常に興味深い。
実際、Microsoft側でもこのタイミングでSurface製品発表会の開催は悩みどころだったようで、開催にあたって例年なら実施されるイベントの模様をストリーミング配信せず、対外的なアピールはプレスリリースを出すにとどまっている。
一方、日本国内では1週間後の10月10日に製品開発トップのパノス・パネイ(Panos Panay)氏が来日し、今回のケースでは珍しい製品お披露目イベントが実施されているわけで、それだけ日本がSurface販売における重点市場として考えられていることが改めて確認できた訳だ。
さて、こうしたMicrosoftとSurfaceの裏事情と今後について記した本が11月末に出版されて話題になっている。
タイトルは「Beneath A Surface(“表面”下)」で、著者はThurrott.comなどのMicrosoft最新事情レポートで著名なブラッド・サムス(Brad Sams)氏だ。本の概要についてはPC USERで佐藤由紀子氏も紹介しているが、Kindle版も提供されているので日本の読者もAmazon.comやAmazon.co.jpで簡単に入手可能だ。今回はこの内容を振り返りつつ、2019年のMicrosoftハードウェア事情について少しだけまとめてみたい。
2019年のSurfaceはどうなる?
まずはSurface関連では、USB Type-Cの搭載で新デザインを採用したSurface Proも興味深いが、今回はSurface StudioとSurface Laptopに注目したい。前述した佐藤氏のレポートにもあるように、MicrosoftはSurface Hub 2の延長線上にあるようなモジュラーデザインで、PC部分のみをアップグレードできるSurface Studioを2020年にもリリースする計画があるという。
興味深いのは、このアイデアがSurface Studioが発表される前にMicrosoftの申請特許として話題となった「スタッカブルPC」のそれに近く、機能拡張モジュールでPCを進化させる仕組みを採用するのではないかという点だ。
もともとAiO(All-in-One)カテゴリーの製品として発表されたSurface Studioだが、PCとディスプレイ機能の分離はそのコンセプトを越えるもので、「新しいPCの形を提案する」というSurfaceの位置付けに合致している。
次にSurface Laptopだが、2019年第4四半期に投入が見込まれる新製品ではAMDの「Picasso」アーキテクチャを採用したものが検討されているという。Picassoは現行製品ラインの「Raven Ridge」の後継にあたるAPUで、2019年の製品投入が見込まれている。
競争という面ではIntelプロセッサ固定よりも、AMDというライバルがいたほうが価格や性能面でPCメーカーやユーザーが得られるメリットも大きいため、Microsoftとして何らかの判断が働いた可能性がある。
サムス氏のレポートでは触れられておらず、“こだわり”の強いパネイ氏がどこまで興味を示しているのか不明だが、MicrosoftではPC製品ラインの拡張にQualcommのSnapdragonを活用する意向を示しており、いずれこれがSurface Go、Surface Pro、Surface Laptopといった製品群に波及してくる可能性がある。「Always Connected PC」のコンセプトをどのようにSurface製品で展開してくるのか、個人的な2019年の注目ポイントと考えている。
あの「Andromeda」は?
ここ1~2年ほど話題となっている「Andromeda」については相変わらず微妙な位置付けで、「2019年に出る可能性がある」という程度に留まっている。これについてはZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏も自身の情報源と合わせながら、「当初想定されていたものよりも大型になる」と述べている。
Andromedaについて何度もレポートしているザック・ボーデン氏によれば、当初想定されていたAndromedaは折りたたみ状態のサイズが5~6型のスマートフォンと同程度のサイズということで、これを開いて展開すると6.5~8型程度のディスプレイサイズになる。
額面通りに受け取るならば、全体に1~2型程度サイズアップして展開時に10型程度を想定したものとなり、縦横比は異なるが、Surface Goに近い(Andromedaはより正方形に近くなる)。問題は、電子書籍以外にこれがフィットする市場が即座に思い浮かばない点で、おそらくMicrosoftが製品を市場投入するとしてもアプリケーションが重要となるだろう。
MicrosoftはどこまでSurfaceに本気なのか
さて、Surface製品でここ2~3年特につきまとっているのが「MicrosoftがどこまでSurfaceに本気なのか」という話題だ。昨今は株式市場でMicrosoftの時価総額がAppleのそれを再び上回って話題となったが、これもクラウドとAI重視を掲げるCEOのサティア・ナデラ氏の手腕やビジョンが評価されてのものだ。
それだけに、なかなか利益を生み出しにくいハードウェアビジネスのSurfaceに対する評価は同社全体のそれに比べて低く、Windows OS開発の位置付けが格下げされる背景の中、「MicrosoftがいつSurfaceから撤退するのか?」といった声にもつながる結果になっている。
だが英Independent紙のインタビューでパネイ氏は、インタビュアーのAdrian Weckler氏に対して「今後もSurfaceビジネスは続けていくし、仮に5年前に同じ質問を受けていたとしても確信を持って同じ回答をしていただろう」と述べている。ナデラ氏からの反応も「ソフトウェアを最大限に生かせるハードウェアの可能性を模索し、将来的なMicrosoftの成長につなげるビジネス」としてSurfaceが位置付けられており、CEOが示すビジョンから外れていない点を強調している。その意味で、MicrosoftがSurfaceでどこまでやれるのか、今後も楽しみに待ちたいと思う。
新型HoloLensと“新ハードウェア”が登場
Microsoftの2019年のハードウェア製品として忘れてはならないのは「HoloLens 2」だ。以前のレポートでサムス氏が「2019年第2四半期が現在のターゲット」と報じていたが、現在量産ベースでの課題が解決すれば2019年春に製品が発表され、夏ごろには出荷される見込みとなっている。
特徴としては、AIコプロセッサ「HPU 2.0」の搭載によって画像やモーション認識機能が強化され、ディスプレイの視野角問題がある程度改善される他、ハードウェアが小型化されることが見込まれている。
これに加え、新たにNeowinが12月10日(米国時間)に複数の情報源の話として報じているのは、次世代HoloLensに「Snapdragon 850」が採用される可能性が高いといううわさだ。
Snapdragon 850は、Qualcommとしては初の「PCをターゲットとしたSoC」であり、現行版のHoloLensに搭載されているIntelのAtomプロセッサを置き換えるものとなる。さらに850の特徴として「Snapdragon X20 LTE modem」を搭載しており、これによりLTE接続を可能とする。
現状のHoloLensはスタンドアロンでの運用も可能だが、インターネット接続にWi-Fi環境が必須となっている。そのため、アプリケーション次第ではあるものの、屋内中心で運用環境の制限を受ける傾向がある。もしLTEによる携帯ネットワーク接続が可能になれば、従来の枠を飛び越えたアプリケーションの登場や活用場面が増えることになるだろう。基本性能の向上もさることながら、おそらくはHoloLens 2での一番大きな変化はここかもしれない。
最後の話題として挙げる“ハードウェア”がWebカメラだ。4K対応かつWindows Hello対応のMicrosoftブランドのWebカメラが2019年に市場投入される見込みだという。本件を報じているのはThurrott.comのポール・サーロット(Paul Thurrott)氏で、Surface以外のPCに加え、Xbox Oneでの利用が可能だという。
インタフェースとしてUSB Type-Cに対応し、2019年後半にも登場するSurface Hub 2向けの提供も行われるようだ。Windows Helloの顔認証を手軽に利用する仕組みがまだ限られる中、ビデオ会議への応用も可能な4K対応Webカメラは広く需要があると思われ、主にエンタープライズ向けを中心に訴求していくことになると予想する。
MSPoweruserも「Most popular Xbox Kinect feature coming back next year」のタイトルで同じように報じていたが、2017年に“レガシー”としてひっそり消えていったKinectの技術が翌々年の2019年に別の形で復活するのは非常に興味深い。
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