Samsung Electronicsは、NVMe/PCIe準拠のM.2 SSD新モデル「970 EVO Plus」を発表した。従来モデルとなる「970 EVO」から最新世代NANDフラッシュメモリの採用やファームウェアの最適化などにより、アクセス速度の高速化を実現している。
今回970 EVO Plusをいち早く試用する機会を得たので、その特徴や性能を検証する。なお、今回試用した評価機には評価版ファームウェアが採用されていたため、最終的な製品版とは性能面などで異なる可能性がある点はご了承願いたい。
従来モデルから書き込み速度が50%以上高速に
今回発表された「970 EVO Plus」は、2018年4月に発表された「970 EVO」の進化モデルとなる。フォームファクタはM.2 2280を採用し、接続インターフェイスはPCI Express 3.0 x4、プロトコルはNVM Express 1.3に準拠している。容量は、250GB/500GB/1TBをラインナップしており、2019年4月半ば以降に2TBモデルも追加される予定だ。
970 EVO Plusでは、従来モデルからアクセス速度、取り分けシーケンシャルライトとランダムライトを高速化。シーケンシャルライトについては従来モデルと比べて50%以上高速化しており、数値だけなら上位モデルの「970 PRO」すら上回っている。
この速度向上の要因は、最新NANDフラッシュメモリの採用とファームウェアの最適化だ。
NANDフラッシュメモリには、Samsung最新世代の「第5世代V-NAND」を採用。第5世代V-NANDは90層以上に積層された3D NANDとなっており、容積あたりの容量増に加えて性能面でも進化し、アクセス速度の向上に貢献している。なお、NANDフラッシュメモリの仕様は、従来モデル同様1セルあたり3bitのデータを格納できるTLC仕様となる。
また、コントローラは、従来モデル同様に「Phoenix Controller」を採用しているが、ファームウェアで第5世代V-NANDに合わせてさらなる最適化が進められているという。こういった部分の進化によって、大幅なアクセス速度の向上を実現している。
TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用しているため、970 EVO PlusでもNANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用することで書き込み速度の遅さを改善する「Intelligent TurboWrite」機能を搭載している。
970 EVO PlusのIntelligent TurboWrite機能の仕様は下表にまとめたとおりで、固定領域と動的に容量が変化するIntelligent領域の容量など、キャッシュ領域の仕様は従来モデルから変わっていない。しかし、シーケンシャルライト速度はTurboWrite有効時だけでなく、TurboWrite無効時にも大きく向上。これには、コントローラの強化やファームウェアの最適化だけでなく、最新世代V-NANDの採用が大きく影響しているという。
さらに、熱対策も従来モデルから強化されているという。Phoenix Controllerチップ表面をニッケルコーティングすることでコントローラの熱を発散しやすくしたり、基板裏面側に熱伝導性に優れる銅箔を積層した製品ラベルを貼り熱の発散性を高めているといった部分は、従来モデル同様だ。
また、ファームウェアに「Dynamic Thermal Guard (DTG)」機能を搭載することで、コントローラやNANDフラッシュメモリの発熱を抑制するといった特徴も従来モデル同様だが、このDTG機能をさらに最適化することによって、発熱の度合いが抑制されており、長時間の連続アクセス時でも速度低下が起こりにくくなっているとのことだ。
なお、表1にもあるように、耐久性に関して、総書き込み容量(TBW)は従来モデルから変わっていない。また、保証期間も5年間と従来同様だ。いずれもこのクラスのSSDとしては申し分ない仕様で、不満はないと言える。
シーケンシャルライトで3,300MB/s超を記録
では、アクセス速度をチェックしよう。
今回は、「CrystalDiskMark 6.0.2」と、「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりで、検証に利用したのは970 EVO Plusの1TBモデル。比較用として従来モデルとなる970 EVOの1TBモデルも用意し、同様のテストを行なった。
なお、検証はマザーボードをケースに装着しない、いわゆるバラックの状態で行なっている。ただ、SSDをマザーボードのM.2スロットに装着するだけでなく、マザーボードに用意されているM.2 SSD用ヒートシンクを装着するとともに、ヒートシンクにファンの風も当てるなど冷却も考慮した。
まず、CrystalDiskMark 6.0.2の結果を見ると、シーケンシャルリードは従来モデルとほぼ同等の3,500MB/s超を記録しているが、シーケンシャルライトは3,300MB/s超と、従来モデルから大幅な高速化を確認した。ランダムアクセス速度に関しては、リード、ライトともにかなりの向上を確認。とくにランダムライトに関しては、10~30%ほど上回っており、こちらも公称どおりに性能向上を確認できた。
これら速度は、PCIe/NVMe SSDのフラグシップモデルと比較してもまったく遜色のないもので、970 EVO Plusの優れたアクセス性能を示すものと言える。
また、ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果は、やや公称の速度には届いていないものの、従来モデルからの大幅な速度向上が確認できる。
ところで、長時間のアクセスが続いた場合の熱の影響を見るため、SSD用ヒートシンクを外し、ファンの風も当てない状態にして、ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2実行時のSSDの温度変化をチェックしてみた。
SSDの温度変化については、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得した。検証時の室温は22℃ほどだった。
以下のグラフが温度変化を示すものだが、中盤以降は970 EVO Plusのほうが低い温度で推移していることがわかる。とくに後半では、970 EVOでは100℃を超える場面もあるが、970 EVO Plusでは最後まで100℃を超えることはなかった。この結果からも、熱対策の進化が見て取れる。
とはいえ、中盤以降は80℃をゆうに超えていることからも、熱対策が不要とは言えず、やはり安定して利用するには970 EVO Plusでも熱対策は必須だろう。
フラグシップモデルに匹敵する性能は大きな魅力
このように970 EVO Plusは、フラグシップモデルに匹敵するアクセス速度を実現することで、従来モデルから魅力が大きく高まっている。TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用してはいるものの、この速度だけでなく、申し分ない耐久性も兼ね備えていることからも、大きな死角はないと言える。
従来モデルはコストパフォーマンスに優れるSSDという位置づけだった(それでも十分ハイエンドクラスだった)が、970 EVO Plusについてはこれまで970 PROがターゲットとしていたハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーにも十分に対応できるだろう。コストパフォーマンスだけでなく、性能も追求したいユーザーにうってつけの製品と言える。
今回970 EVO Plusをいち早く試用する機会を得たので、その特徴や性能を検証する。なお、今回試用した評価機には評価版ファームウェアが採用されていたため、最終的な製品版とは性能面などで異なる可能性がある点はご了承願いたい。
従来モデルから書き込み速度が50%以上高速に
今回発表された「970 EVO Plus」は、2018年4月に発表された「970 EVO」の進化モデルとなる。フォームファクタはM.2 2280を採用し、接続インターフェイスはPCI Express 3.0 x4、プロトコルはNVM Express 1.3に準拠している。容量は、250GB/500GB/1TBをラインナップしており、2019年4月半ば以降に2TBモデルも追加される予定だ。
970 EVO Plusでは、従来モデルからアクセス速度、取り分けシーケンシャルライトとランダムライトを高速化。シーケンシャルライトについては従来モデルと比べて50%以上高速化しており、数値だけなら上位モデルの「970 PRO」すら上回っている。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB |
---|---|---|---|
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インターフェイス | PCI Express 3.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.3 | ||
NANDフラッシュメモリ | 96層 V-NAND TLC | ||
コントローラ | Phoenix | ||
DRAMキャッシュ容量 | 512MB LPDDR4 | 1GB LPDDR4 | |
シーケンシャルリード | 3,500MB/s | ||
シーケンシャルライト | 2,300MB/s | 3,200MB/s | 3,300MB/s |
ランダムリード(4KB/QD1/Thread1) | 17,000IOPS | 19,000IOPS | |
ランダムライト(4KB/QD1/Thread1) | 60,000IOPS | ||
ランダムリード(4KB/QD32/Thread4) | 250,000IOPS | 480,000IOPS | 600,000IOPS |
ランダムライト(4KB/QD32/Thread4) | 550,000IOPS | ||
総書き込み容量 | 150TBW | 300TBW | 600TBW |
保証期間 | 5年 |
NANDフラッシュメモリには、Samsung最新世代の「第5世代V-NAND」を採用。第5世代V-NANDは90層以上に積層された3D NANDとなっており、容積あたりの容量増に加えて性能面でも進化し、アクセス速度の向上に貢献している。なお、NANDフラッシュメモリの仕様は、従来モデル同様1セルあたり3bitのデータを格納できるTLC仕様となる。
また、コントローラは、従来モデル同様に「Phoenix Controller」を採用しているが、ファームウェアで第5世代V-NANDに合わせてさらなる最適化が進められているという。こういった部分の進化によって、大幅なアクセス速度の向上を実現している。
TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用しているため、970 EVO PlusでもNANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用することで書き込み速度の遅さを改善する「Intelligent TurboWrite」機能を搭載している。
970 EVO PlusのIntelligent TurboWrite機能の仕様は下表にまとめたとおりで、固定領域と動的に容量が変化するIntelligent領域の容量など、キャッシュ領域の仕様は従来モデルから変わっていない。しかし、シーケンシャルライト速度はTurboWrite有効時だけでなく、TurboWrite無効時にも大きく向上。これには、コントローラの強化やファームウェアの最適化だけでなく、最新世代V-NANDの採用が大きく影響しているという。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | |
---|---|---|---|---|
TurboWrite領域容量 | 標準 | 4GB | 4GB | 6GB |
Intelligent | 9GB | 18GB | 36GB | |
合計 | 13GB | 22GB | 42GB | |
シーケンシャルライト速度 | TurboWrite有効時 | 2,300MB/s | 3,200MB/s | 3,300MB/s |
TurboWrite無効時 | 400MB/s | 900MB/s | 1,700MB/s |
また、ファームウェアに「Dynamic Thermal Guard (DTG)」機能を搭載することで、コントローラやNANDフラッシュメモリの発熱を抑制するといった特徴も従来モデル同様だが、このDTG機能をさらに最適化することによって、発熱の度合いが抑制されており、長時間の連続アクセス時でも速度低下が起こりにくくなっているとのことだ。
なお、表1にもあるように、耐久性に関して、総書き込み容量(TBW)は従来モデルから変わっていない。また、保証期間も5年間と従来同様だ。いずれもこのクラスのSSDとしては申し分ない仕様で、不満はないと言える。
シーケンシャルライトで3,300MB/s超を記録
では、アクセス速度をチェックしよう。
今回は、「CrystalDiskMark 6.0.2」と、「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりで、検証に利用したのは970 EVO Plusの1TBモデル。比較用として従来モデルとなる970 EVOの1TBモデルも用意し、同様のテストを行なった。
なお、検証はマザーボードをケースに装着しない、いわゆるバラックの状態で行なっている。ただ、SSDをマザーボードのM.2スロットに装着するだけでなく、マザーボードに用意されているM.2 SSD用ヒートシンクを装着するとともに、ヒートシンクにファンの風も当てるなど冷却も考慮した。
【表3】テスト環境 | |
---|---|
CPU | Core i5-9600K |
マザーボード | ASUS TUF Z390-PLUS GAMING |
メモリ | DDR4-2666 16GB |
システム用ストレージ | Samsung SSD 840 PRO 256GB |
OS | Windows 10 Pro |
これら速度は、PCIe/NVMe SSDのフラグシップモデルと比較してもまったく遜色のないもので、970 EVO Plusの優れたアクセス性能を示すものと言える。
また、ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果は、やや公称の速度には届いていないものの、従来モデルからの大幅な速度向上が確認できる。
ところで、長時間のアクセスが続いた場合の熱の影響を見るため、SSD用ヒートシンクを外し、ファンの風も当てない状態にして、ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2実行時のSSDの温度変化をチェックしてみた。
SSDの温度変化については、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得した。検証時の室温は22℃ほどだった。
以下のグラフが温度変化を示すものだが、中盤以降は970 EVO Plusのほうが低い温度で推移していることがわかる。とくに後半では、970 EVOでは100℃を超える場面もあるが、970 EVO Plusでは最後まで100℃を超えることはなかった。この結果からも、熱対策の進化が見て取れる。
とはいえ、中盤以降は80℃をゆうに超えていることからも、熱対策が不要とは言えず、やはり安定して利用するには970 EVO Plusでも熱対策は必須だろう。
フラグシップモデルに匹敵する性能は大きな魅力
このように970 EVO Plusは、フラグシップモデルに匹敵するアクセス速度を実現することで、従来モデルから魅力が大きく高まっている。TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用してはいるものの、この速度だけでなく、申し分ない耐久性も兼ね備えていることからも、大きな死角はないと言える。
従来モデルはコストパフォーマンスに優れるSSDという位置づけだった(それでも十分ハイエンドクラスだった)が、970 EVO Plusについてはこれまで970 PROがターゲットとしていたハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーにも十分に対応できるだろう。コストパフォーマンスだけでなく、性能も追求したいユーザーにうってつけの製品と言える。
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