Googleの「Pixel 4a」は、Android 10を搭載した5.8型スマートフォンだ。ミドルクラスのCPUを搭載しつつ、実売42,800円という、リーズナブルな価格が特徴だ。
Googleのスマートフォン「Pixel」シリーズは、秋にフラグシップモデルがリリースされたのち、翌春にその廉価モデルがリリースされるのが、ここ2年間のサイクルになっている。今回のPixel 4aは、昨秋に発売されたPixel 4の廉価版に相当するモデルだが、実質的に別物と言っていいほどの違いがある。
ミドルクラスで4万円台のスマートフォンと言えば、今春発売された第2世代「iPhone SE」が挙げられる。本製品はそれを意識したと見られる仕様が多くあり、実際に購入するにあたっては、この両者を比較検討する人も少なくないはずだ。
今回は、このPixel 4aが電子書籍ユースでどの程度使えるか、メーカーからの貸出機をもとに、iPhone SEと比較しつつチェックしていく。
価格帯が近いiPhone SEとは似て非なる方向性
従来モデルであるPixel 3aとの詳細なスペック比較はすでにニュース記事に掲載済なので、ここでは同価格帯のライバルである第2世代iPhone SEと比較してみよう。iOSとAndroidの違いもあり、直接的に比較できない項目も多いことを念頭に置いた上で見てほしい。
過去のモデルの設計を活かしつつ機能を取捨選択してリーズナブルに仕上げた端末、という性格は両製品ともに似ているが、個々のスペックを見ていくと、製品の方向性はかなり違っていることがわかる。
両製品が類似しているのは、筐体サイズ、および重量だ。ただし狭額縁デザインということもあり、画面サイズは圧倒的にPixel 4aのほうが大きい。解像度も443ppiと高く、フラグシップモデルと比較しても遜色ない。
CPUはSnapdragon 730(オクタコア)ということで、Snapdragon 855を搭載するPixel 4には劣るが、ミドルクラスとしては実用レベルだ。一方のiPhone SEはフラグシップであるiPhone 11 Proシリーズと同じA13 Bionicチップを採用しており、両者の注力ポイントの違いが見え隠れしている。
ストレージは128GBモデルのみ。iPhone SEが容量別に3モデルをラインナップしているのと対象的だが、128GBという容量そのものは妥当だろう。ちなみに初期状態では11%を使用しており、残り113GBという状態だった。
細かい違いとしては、iPhone SEが防水防塵対応なのに対し、Pixel 4aは非対応。さらにWi-Fi 6(11ax)ではなく従来のWi-Fi 5(11ac)だったり、ワイヤレス充電が省略されていたりと、Pixel 4aは細かい部分がかなり間引かれている印象だ。一方で、最大18W対応のUSB PD充電器が付属するのは、プラスと言っていいだろう。
価格は42,900円。iPhone SEの同じ128GBモデルは54,780円なので、かなりの価格差がある。以前のPixel 3aが64GBで49,500円だったことを考えると、本製品のリーズナブルさは際立っている。iPhone SE価格が与えた影響は少なからずあると見てよいだろう。
画面の広さと筐体の軽さが大きな特徴
では実際に使ってみよう。実機に触れてみて真っ先に感じるのは「軽い」そして「画面が広い」ことだ。
筆者は通常、iPhone SEとPixel 3という、ともに150gを切る軽量端末を使用しているが、本製品の重量(143g)はこれらと同等で、持っていても重量感を感じない。Pixel 3から4に進化する時点で150gの大台を突破していたのが元に戻った格好で、スマートフォン選びで軽さを重視する人には魅力的だろう。
また画面の広さについても、上下左右ともにベゼルがスリムなのは好印象だ。従来のPixel 4は上部ベゼルだけが太いという、バランスの悪さが目立っていたので、本製品のベゼルのスリムさは歓迎できる。ちなみに画面比率は従来の19:9よりもさらに細長い、19.5:9ということで、縦スクロール時の情報量の多さが際立つ。
この狭額縁ベゼルの実現に寄与しているのが、パンチホール式の前面カメラだ。画面のなかに黒い穴が浮いたような外見で、アプリによってはこのカメラが目立たないよう上段ごと黒く塗りつぶされたり、あるいは全画面表示のなかにカメラがポツンと浮いた状態になったりする。
こうした外見は好みが分かれるかもしれないが、これと引き換えに狭額縁ベゼルが実現できているわけで、このくらいはがまんすべきだろう。ちなみにこのパンチホールカメラは画面の下に内蔵されているので、画面から出っ張っているわけではなく、穴が開いているわけでもない。それゆえゴミやホコリが溜まるようなこともない。
操作はジェスチャーナビゲーションがおもで、一般的なホームボタンや「戻る」ボタンなどは表示されていない。馴染めなければ設定画面のシステム→ジェスチャー→システムナビゲーション→デフォルトで選択されている「ジェスチャーナビゲーション」から「3ボタンナビゲーション」へと変更するとよいだろう。
なお電子書籍ユースとは関係ないが、Pixel 4にはなかった3.5mmのイヤフォンジャックをわざわざ追加しているのは興味深い(Pixel 3aには搭載)。iPhone SEはイヤフォンジャックがないので、製品選びにあたってこれが響く人も少なからずいるだろう。
ページの表示サイズは変わらずも、縦長化でストアなどの閲覧性は向上
電子書籍端末としての使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」を使用している。とくにことわりがない場合は、Kindleアプリで試用している。
本製品はアスペクト比19.5:9と、従来のPixelシリーズよりも縦に長い画面を有している。このことは、電子書籍のライブラリなど、縦スクロールが必要なページでは有利に働く。iPhone SEと比べると、その差は圧倒的だ。
とは言えコミックでは、ページの表示サイズは画面の高さではなく幅で決まるので、従来のPixelシリーズと比べてページが大きく表示されるわけではない。またテキストの場合、1行の文字数が増えすぎると読みにくいという別の問題があり、上下に広くなってもあまり意味はない。
つまりテキストでもコミックでも、画面が縦長であることは、あまり直接的なメリットにはならない。役に立つのは、ストアやライブラリなど、縦スクロールが必要なページだけだ。
ただしこれは従来のPixelシリーズとの比較であって、iPhone SEに比べると横幅はわずかに大きいため、コミックは本製品のほうがひとまわり大きく表示される。
また解像度自体、本製品のほうが高いこともあり、細い線やセリフの写植などでは本製品のほうがシャープさを感じることもしばしばだ。本製品とiPhone SE、どちらが電子書籍向けかと言われると、本製品のほうが(僅差ではあるが)上だろう。
ところで本製品の特徴に、画面左上のパンチホール式前面カメラがある。多くの電子書籍アプリでは、このパンチホールカメラがある水平方向のエリアは、基本的に余白扱いになるため、パンチホールの黒丸が、画面上にポツンと浮いたような状態になる。
また同じ理由で、テキストコンテンツはこのパンチホールのエリアには表示されないので、画面に対してテキスト全体が下に寄ったように見える。実用上なんらかの問題があるわけではないが、神経質な人は気になるかもしれない(開発者オプションも見てみたが、カメラを含む水平方向をまるごと塗りつぶすようなオプションは見つからなかった)。
もっとも、気になる点はそれぐらいで、ほかの操作は快適だ。強いて挙げれば、音量ボタンの押し心地が少々硬く、音量ボタンでページめくりをしようとすると指が疲れやすいのが気になるくらいだ。個人的には、顔認証が指紋認証に改められたのは、電子書籍ユースではおおいにプラスと感じる。
6型以下では候補の最右翼に来る製品
以上ざっと見てきたが、全体的には非常によくできた製品であり、コンパクトなサイズ感でありながら、電子書籍ユースにも使いやすい製品だ。
もちろん、横幅がかぎられていることから、コミックの表示サイズはかつての「Pixel 4 XL」などにおよばないが(大画面モデルのラインナップがなくなったのはつくづく残念だ)、iPhone SEよりはひとまわり大きく表示できるほか、重量が150g以下に抑えられているのもプラスだ。
またAndroidということで、わざわざブラウザに切り替えずにアプリ内でコミックなどの続刊をすぐさま購入できるのも、iPhoneにはないメリットだ。電子書籍を楽しむことを前提に、なるべく予算を抑えて、なおかつ実用性が高い6型以下のスマートフォンを選ぶのであれば、候補の最右翼に来る製品だろう。
一方で、従来のPixelシリーズを所有しているユーザーからすると、2倍望遠カメラが省かれていたり、また防水仕様でないといったマイナスはなくはない。このあと発売される5Gモデルは、電子書籍ユース中心であれば待つ必要はないだろうが、これらの点は事前に把握しておいたほうがよさそうだ。
Googleのスマートフォン「Pixel」シリーズは、秋にフラグシップモデルがリリースされたのち、翌春にその廉価モデルがリリースされるのが、ここ2年間のサイクルになっている。今回のPixel 4aは、昨秋に発売されたPixel 4の廉価版に相当するモデルだが、実質的に別物と言っていいほどの違いがある。
ミドルクラスで4万円台のスマートフォンと言えば、今春発売された第2世代「iPhone SE」が挙げられる。本製品はそれを意識したと見られる仕様が多くあり、実際に購入するにあたっては、この両者を比較検討する人も少なくないはずだ。
今回は、このPixel 4aが電子書籍ユースでどの程度使えるか、メーカーからの貸出機をもとに、iPhone SEと比較しつつチェックしていく。
価格帯が近いiPhone SEとは似て非なる方向性
従来モデルであるPixel 3aとの詳細なスペック比較はすでにニュース記事に掲載済なので、ここでは同価格帯のライバルである第2世代iPhone SEと比較してみよう。iOSとAndroidの違いもあり、直接的に比較できない項目も多いことを念頭に置いた上で見てほしい。
過去のモデルの設計を活かしつつ機能を取捨選択してリーズナブルに仕上げた端末、という性格は両製品ともに似ているが、個々のスペックを見ていくと、製品の方向性はかなり違っていることがわかる。
両製品が類似しているのは、筐体サイズ、および重量だ。ただし狭額縁デザインということもあり、画面サイズは圧倒的にPixel 4aのほうが大きい。解像度も443ppiと高く、フラグシップモデルと比較しても遜色ない。
CPUはSnapdragon 730(オクタコア)ということで、Snapdragon 855を搭載するPixel 4には劣るが、ミドルクラスとしては実用レベルだ。一方のiPhone SEはフラグシップであるiPhone 11 Proシリーズと同じA13 Bionicチップを採用しており、両者の注力ポイントの違いが見え隠れしている。
ストレージは128GBモデルのみ。iPhone SEが容量別に3モデルをラインナップしているのと対象的だが、128GBという容量そのものは妥当だろう。ちなみに初期状態では11%を使用しており、残り113GBという状態だった。
細かい違いとしては、iPhone SEが防水防塵対応なのに対し、Pixel 4aは非対応。さらにWi-Fi 6(11ax)ではなく従来のWi-Fi 5(11ac)だったり、ワイヤレス充電が省略されていたりと、Pixel 4aは細かい部分がかなり間引かれている印象だ。一方で、最大18W対応のUSB PD充電器が付属するのは、プラスと言っていいだろう。
価格は42,900円。iPhone SEの同じ128GBモデルは54,780円なので、かなりの価格差がある。以前のPixel 3aが64GBで49,500円だったことを考えると、本製品のリーズナブルさは際立っている。iPhone SE価格が与えた影響は少なからずあると見てよいだろう。
画面の広さと筐体の軽さが大きな特徴
では実際に使ってみよう。実機に触れてみて真っ先に感じるのは「軽い」そして「画面が広い」ことだ。
筆者は通常、iPhone SEとPixel 3という、ともに150gを切る軽量端末を使用しているが、本製品の重量(143g)はこれらと同等で、持っていても重量感を感じない。Pixel 3から4に進化する時点で150gの大台を突破していたのが元に戻った格好で、スマートフォン選びで軽さを重視する人には魅力的だろう。
また画面の広さについても、上下左右ともにベゼルがスリムなのは好印象だ。従来のPixel 4は上部ベゼルだけが太いという、バランスの悪さが目立っていたので、本製品のベゼルのスリムさは歓迎できる。ちなみに画面比率は従来の19:9よりもさらに細長い、19.5:9ということで、縦スクロール時の情報量の多さが際立つ。
この狭額縁ベゼルの実現に寄与しているのが、パンチホール式の前面カメラだ。画面のなかに黒い穴が浮いたような外見で、アプリによってはこのカメラが目立たないよう上段ごと黒く塗りつぶされたり、あるいは全画面表示のなかにカメラがポツンと浮いた状態になったりする。
こうした外見は好みが分かれるかもしれないが、これと引き換えに狭額縁ベゼルが実現できているわけで、このくらいはがまんすべきだろう。ちなみにこのパンチホールカメラは画面の下に内蔵されているので、画面から出っ張っているわけではなく、穴が開いているわけでもない。それゆえゴミやホコリが溜まるようなこともない。
操作はジェスチャーナビゲーションがおもで、一般的なホームボタンや「戻る」ボタンなどは表示されていない。馴染めなければ設定画面のシステム→ジェスチャー→システムナビゲーション→デフォルトで選択されている「ジェスチャーナビゲーション」から「3ボタンナビゲーション」へと変更するとよいだろう。
なお電子書籍ユースとは関係ないが、Pixel 4にはなかった3.5mmのイヤフォンジャックをわざわざ追加しているのは興味深い(Pixel 3aには搭載)。iPhone SEはイヤフォンジャックがないので、製品選びにあたってこれが響く人も少なからずいるだろう。
ページの表示サイズは変わらずも、縦長化でストアなどの閲覧性は向上
電子書籍端末としての使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」を使用している。とくにことわりがない場合は、Kindleアプリで試用している。
本製品はアスペクト比19.5:9と、従来のPixelシリーズよりも縦に長い画面を有している。このことは、電子書籍のライブラリなど、縦スクロールが必要なページでは有利に働く。iPhone SEと比べると、その差は圧倒的だ。
とは言えコミックでは、ページの表示サイズは画面の高さではなく幅で決まるので、従来のPixelシリーズと比べてページが大きく表示されるわけではない。またテキストの場合、1行の文字数が増えすぎると読みにくいという別の問題があり、上下に広くなってもあまり意味はない。
つまりテキストでもコミックでも、画面が縦長であることは、あまり直接的なメリットにはならない。役に立つのは、ストアやライブラリなど、縦スクロールが必要なページだけだ。
ただしこれは従来のPixelシリーズとの比較であって、iPhone SEに比べると横幅はわずかに大きいため、コミックは本製品のほうがひとまわり大きく表示される。
また解像度自体、本製品のほうが高いこともあり、細い線やセリフの写植などでは本製品のほうがシャープさを感じることもしばしばだ。本製品とiPhone SE、どちらが電子書籍向けかと言われると、本製品のほうが(僅差ではあるが)上だろう。
ところで本製品の特徴に、画面左上のパンチホール式前面カメラがある。多くの電子書籍アプリでは、このパンチホールカメラがある水平方向のエリアは、基本的に余白扱いになるため、パンチホールの黒丸が、画面上にポツンと浮いたような状態になる。
また同じ理由で、テキストコンテンツはこのパンチホールのエリアには表示されないので、画面に対してテキスト全体が下に寄ったように見える。実用上なんらかの問題があるわけではないが、神経質な人は気になるかもしれない(開発者オプションも見てみたが、カメラを含む水平方向をまるごと塗りつぶすようなオプションは見つからなかった)。
もっとも、気になる点はそれぐらいで、ほかの操作は快適だ。強いて挙げれば、音量ボタンの押し心地が少々硬く、音量ボタンでページめくりをしようとすると指が疲れやすいのが気になるくらいだ。個人的には、顔認証が指紋認証に改められたのは、電子書籍ユースではおおいにプラスと感じる。
6型以下では候補の最右翼に来る製品
以上ざっと見てきたが、全体的には非常によくできた製品であり、コンパクトなサイズ感でありながら、電子書籍ユースにも使いやすい製品だ。
もちろん、横幅がかぎられていることから、コミックの表示サイズはかつての「Pixel 4 XL」などにおよばないが(大画面モデルのラインナップがなくなったのはつくづく残念だ)、iPhone SEよりはひとまわり大きく表示できるほか、重量が150g以下に抑えられているのもプラスだ。
またAndroidということで、わざわざブラウザに切り替えずにアプリ内でコミックなどの続刊をすぐさま購入できるのも、iPhoneにはないメリットだ。電子書籍を楽しむことを前提に、なるべく予算を抑えて、なおかつ実用性が高い6型以下のスマートフォンを選ぶのであれば、候補の最右翼に来る製品だろう。
一方で、従来のPixelシリーズを所有しているユーザーからすると、2倍望遠カメラが省かれていたり、また防水仕様でないといったマイナスはなくはない。このあと発売される5Gモデルは、電子書籍ユース中心であれば待つ必要はないだろうが、これらの点は事前に把握しておいたほうがよさそうだ。
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