バッファローとエレコムは、11月に“USBメモリのかたちをしたSSD”を発表したのだが、いずれの記事にも予想以上のアクセスが集中している。単なる外付けストレージの記事にこれほどの注目が集まるのはめずらしいのだが、読者のなかで「USBメモリ型SSDはUSBメモリとなにが違うのか」という疑問が多く挙がっているので、それにお答えしたい。
USBメモリもUSBメモリ型SSDも、NANDフラッシュを使ってデータを保存するという意味ではまったく共通だ。HDDとは異なり、駆動部品がないため衝撃に強く、データの持ち運びのさいの安心感が高い。HDDと比較してランダムアクセスにも強いといったメリットもある。いずれも、性能、容量や耐久性はNANDフラッシュに依存するため、同じNANDフラッシュが採用されれば理論上、違いはそれほどない。
とはいえ、実際は同じNANDフラッシュが採用されることはないし、コントローラによって違いは生じる。USBメモリはNANDフラッシュを直接USBで読み書きできるプロトコルに変換する形式が主流(なかにはmicroSDを流用しているものもあるが)だが、USB SSDはSATAやNVMeのSSDを、変換コントローラを介してUSBに変換しているのが一般的だ。
ただ今回バッファローとエレコムの両製品を分解して解析したわけではないので、コントローラや内部の仕組み、プロトコルといった違いの説明は避ける。しかしこれらのUSBメモリ型SSDが、一般的なUSB SSDと同様であるという前提を踏まえたうえで、USBメモリとUSBメモリ型SSDは“OS上からの認識され方が異なる”点を、しっかり押さえておきたい。使い勝手がやや異なるからである。
そもそもUSBメモリは、本来異なるマシン間のファイルのやり取りを想定したもので、Windows上から「リムーバブルメディア」として認識される。そのためWindowsの「ディスクの管理」から行なえる操作は「ドライブ文字の変更」と「取り出し」だけだ。また、GPT形式やダイナミックディスクへの変換もできない(ただ、GPTやSuper Floppy Disk形式は別途ツールを使えば作成は可能)。
一方でUSBメモリ型SSDは、いわゆるUSB SSDを小型化したものだ。それほど頻繁に抜き差しされることを想定しておらず、異なるマシン間のファイルのやり取りではなく、挿したマシンの容量拡張に使われることを想定している。そのためWindows上から一般的なローカルディスクのように認識され、“ほぼ内蔵SSD”のように扱える。GPT形式やダイナミックディスクへの変換も可能で、パーティション操作の自由度は高い。
また、LinuxといったOSのインストールメディアとして利用する場合、USBメモリでないと利用できない可能性はある。今回、USBブート可能なメディアを作成するツール「Rufus 3.13」において試したところ、手持ちのUSB SSDは3台とも認識されなかった(ただWindows 10のメディア作成ツールは問題なく認識した)。
ポイントを改めて要約すると以下のとおりだ。
USBメモリ
・マシン間のファイルのやり取りを想定
・パーティション操作は限定される
・LinuxといったOSのUSBブートメディアを作成するRufusから認識される
USBメモリ型SSD
・挿したマシンの容量拡張を想定
・パーティション操作の自由度が高い
・Rufusからは認識されない
ちなみに、USBメモリもUSBメモリ型SSDも、USB Mass Storage Classのなかで定義されているので、パソコンでは問題なく認識できると思うが、単体でUSBメモリから音楽や動画ファイルを読み出して再生できるスピーカーやメディアプレーヤーのような製品は、USBメモリ型SSDをサポートしていない可能性もあるので注意したい。
逆に、近年はじょじょに制限が緩和されていて稀ではあるのだが、アプリケーションのインストーラによっては、リムーバブルディスク=USBメモリをインストール先として指定できない可能性もある。そういったシーンではUSBメモリ型SSDのほうが活躍するだろう。
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